同じような悩みを持つのは、あなただけではありません。この概要では、ISO 9001を実施することで組織全体に利益がもたらされる理由と、ISO 9001の要求事項、そして認証取得に向けて踏むべき実践的なステップをご紹介します。
ISO 9001は、国際標準化機構(ISO)が策定する、品質管理システム(QMS)のための国際規格です。2015 年に更新されたISO 9001の規格を、ISO 9001:2015といいます。更新版を公表するにあたり、国際的な承認を得るために、ISO 9001加盟国の過半数の同意を得なければなりませんでした。世界中の加盟国の過半数が承認して、この更新版が作られています。
2017年末に実施されたISO 9001認証に関する調査では、世界各国でISO 9001品質マネジメント規格を導入した企業の多くが、世界的な景気後退にも関わらず安定した経営を続けていることが示されています。以下は、過去6年間の調査結果です。
2017年のISO 調査データ
さらに、ISO 9000グループにはISO 9001の要求事項を支持する文書があります。例えばISO 9000では、ISO 9001の背景となる用語や基本的な考え方が定義されています。また、ISO 9004では、ISO 9001の品質管理システムを構築しやすくするためのガイダンスが書かれています。
QMSと表記されることが多い品質管理システムは、方針やプロセス、文書化や記録の仕方についてまとめたものです。品質管理システムでは、製品の作り方や製品・サービスの提供方法を組織内で規定するための一連のルールを定義します。QMSは、企業のニーズや製品あるいはサービスに合わせて作らなければなりません。ISO 9001では、QMSを効果的にするために必要な要素を見落とさないための一連のガイドラインが提供されています。
先に述べたように、ISO 9001:2015は国際的に認められた規格で、業種を問わず企業が品質管理システムを構築し、実施し、維持していくためにあります。組織の規模や業界を問わず、様々な企業を想定して作られており、どんな企業でも利用できます。顧客満足の獲得や改善に向けたシステムを企業内で構築する基礎となる、国際的な規格です。そのため、サプライヤーの最低条件としてこの規格を採用している企業が多くあります。
企業内のプロセスを内部で監査したり、認証機関が審査を行ったりするため、顧客が直接監査や審査を行う必要はありません。このため、ISO 9001は多くの企業が市場で優位性を持つために不可欠になっているのです。
さらに、ISO 9001の7つの品質管理原則をもとに品質管理システムを構築することで、顧客を安心させられるでしょう。ISO 9001規格の背景にある品質管理原則について、詳しくはこちらの記事 Seven Quality Management Principles behind ISO9001 requirements をご参照ください。
実際のところ、ISO 9001は基礎的かつ影響力の大きい規格なので、航空宇宙業界向けのAS9100や、医療器具業界向けのISO 13485、そして自動車業界向けのIATF 16949といった業界グループに特有の要求事項、すなわち業界の標準を追加する時の基盤として用いられています。
ISO 9001は10のセクションで構成されています。最初の3つは導入部分で、残りの7つは品質マネジメントシステムの要求事項に関するものです。これら7つのセクションの内容は、次のとおりです。
セクション4:組織の状況 – ここでは、品質マネジメントシステムの導入に向けて、自分たちの組織を理解するための要求事項が述べられています。また、組織内外の課題、利害関係者と利害関係者のニーズ、品質マネジメントシステムの範囲、そしてプロセスやプロセス相互作用を明確にするための要求事項も述べられています。
セクション5:リーダーシップ – リーダーシップに関する要求事項では、経営者のトップが品質マネジメントシステム導入の要になる必要性に触れています。経営者のトップは、顧客中心を徹底したり、品質方針の定義や伝達を行ったり、組織全体を見渡して各自の役割と責任を決定したりしながら、品質マネジメントへの取り組み姿勢を示さなければなりません。
セセクション6:計画 – また経営者のトップは、品質マネジメントシステムが機能していくように計画を立てる必要があります。組織における品質マネジメントシステムのリスクおよび機会を評価し、改善に向けた品質目標を明確にし、これら目標を達成するための計画を立てなければなりません。
セクション7:サポート – このセクションは、品質マネジメントシステムに必要な全リソースの管理に関するものです。人材、建物やインフラ、労働環境、モニタリングおよび測定のためのリソース、組織が有する知見などを含む全リソースを管理することの必要性が述べられています。また、力量、認識、そしてコミュニケーションに関する要求事項や、文書化された情報(担当プロセスを進めるのに必要な文書や記録)の管理についても述べられています。
セクション8:運営 – 運営に関する要求事項では、計画、そして製品製造やサービス提供のあらゆる側面が述べられています。また、計画、製品要件のレビュー、設計、外部調達先の管理、製品の製造や発売、サービスの開発と提供、そしてプロセスのアウトプットで規格に準拠しないものの管理なども述べられています。
セクション9:パフォーマンス評価 – 組織の品質マネジメントシステムがうまく機能しているかを確実にモニタリングするための要求事項は、ここで述べられています。さらに、プロセスのモニタリングと測定、顧客満足度の評価、内部監査、品質マネジメントシステムに対して実施されるマネジメントレビューについても述べられています。
セクション10:改善 – 最終セクションでは、長期間にわたって品質マネジメントシステムを改善していくための要求事項が述べられています。規格に準拠しないプロセスの評価やプロセスの修正措置の必要性についても触れています。
上でご紹介したセクションの基礎にあるのは、計画-実行-評価-改善のPDCAサイクルです。PDCAサイクルでは、先に述べた項目を用いて組織内のプロセスを変更し、プロセス内の改善を行い、改善後の状態を維持していきます。
ISO 9001でこのサイクルがどのように機能するのか、詳しくはブログ記事をお読みください。 Plan-Do-Check-Act in the ISO 9001 Standard.
ISO 9001の利点は、いくら評価してもしすぎることはありません。大企業も中小企業もISO 9001を取り入れて、膨大なコスト削減や効果的な節約を成功させるなど、大きな成果をあげています。利点の一部を、以下にご紹介します。
企業のイメージと信頼度のアップ – 公式の認証機関から認証を取得していることを顧客が知れば、あなたの企業が顧客の要求に応えたり改善を行ったりするためのシステムを導入していると理解してもらえます。これにより、約束をきちんと守る企業として、顧客からの信頼度がアップします。
より良い顧客満足 顧客からの要求事項とニ – ズを確認し、これらを満たすことでより良い顧客満足を得るというのは、ISO 9001のQMSの重要な原則です。顧客を満足させられれば、次の仕事の依頼につながります。
包括的なプロセス – ISO 9001のプロセス手法を用いることで、組織内の個々のプロセスだけでなく、プロセス間の相互作用も見渡すことができます。これにより、改善が必要な領域や、組織内でリソースを節約できる領域を見つけやすくなります。
実証に基づく意思決定スキーム – ISO 9001のQMSを成功させるためには、実証に基づくスキームに従い決定を下すことが重要です。しっかりとした実証に基づくスキームに従って決定を下すことで、ターゲットとするリソースが明確になり、効果的に問題が解決できるようになり、組織内での効率性や有効性が上がります。
継続的な改善の徹底 – QMSにより継続的に改善がもたらされるので、時間やお金やその他のリソースをますます節約できます。継続的な改善を企業内で徹底させることで、プロセス改善に直接関わる従業員が改善に向けて注力するようになります。
従業員の参画 – 最も効果的なプロセス改善案を見つけられるのは、そのプロセスに関わる従業員をおいて他に誰がいるでしょうか。管理だけでなく、プロセス改善にも従業員を参画させることで、従業員の意識が企業の成果に向けられるようになります。
ISO 9001の認証とは何でしょうか。認証には、2種類あります。まず、ISO 9001の要求事項と照らし合わせて企業の品質管理システムを認証するもの、そしてISO 9001の要求事項と照らし合わせて監査や審査を行えるよう個々人を認証するものです。このセクションでは、企業のISO 9001の品質管理システムの実施手順と、認証取得の手順を説明します。
企業に対するISO 9001認証では、ISO 9001の要求事項に基づき企業がQMSを実施し、公式の認証機関がこのQMSがISO 9001規格の要求事項に合致しているか審査し、承認します。
品質マネジメントシステムのマネジメントサポートと顧客要求の明確化から着手することで、品質方針と品質目標を特定する必要が出てきます。品質方針と品質目標が特定できれば、品質マネジメントシステム全体の見通しおよび導入について明確になります。加えて、必須あるいは任意のプロセスや、組織で的確な製品あるいはサービスを提供するために必要な手順を決める必要があります。作成すべき必須文書は6つで、残りは企業ごとに必要に応じて追加することになっています。詳しい説明は、こちらの白書 List of mandatory documents required by ISO 9001:2015 をお読みください。.
文書作成は、企業内で行うことができますし、コンサルタントを雇って手伝ってもらうこともできます。また、標準的な文書を購入するという方法もあります。文書サンプルをご覧になるには、ISO 9001の 無料ダウンロード のページへどうぞ。
すべてのプロセスと手順が整ったら、ある一定期間QMSを実施しなければなりません。これにより、システムの審査とレビューを経て認証を取得する、という次のステップに必要な記録を取ることができます。
文書化と実施が完了したら、確実に認証取得できるよう、以下のステップを踏む必要があります。
内部監査 – 内部監査でQMSプロセスをチェックします。内部監査の目標は、プロセスに準拠していることを示す記録をきちんと取ること、そして、隠れていた課題点や弱点を見つけ出すことにあります。
マネジメントレビュー – 経営陣が公式にレビューを行い、決定とリソース配分を適切に行うための管理システムプロセスに関して、関連事項を評価します。
見直し活動 – 内部監査とマネジメントレビューを受けたら、明らかになった問題点の根本にある原因を見直し、どうやって問題を解決したかを記録しなければなりません。
企業の認証プロセスには、2つのステージがあります。
ステージ1 文書化に関するレビュー – 選りすぐりの認証機関がチェックを行い、作成した文書がISO 9001の要求事項をきちんと満たしていることを保証します。
ステージ1 審査本番 – ここでは、認証機関の審査員が文書や記録そして企業の実践状況をレビューし、企業での実際の活動がISO 9001と作成済みの文書に準拠しているかを確認します。
ISO 9001の概念を学ぶためのトレーニングができます。また、個々人向けに様々なコースをご用意しています。認証機関の審査員になるためのコースは、以下ご紹介するコースのうち最初のものだけですが、その他のコースでは、企業で大いに役立つスキルが身につきます。
ISO 9001主要審査員コース 4、5日かけてISO 9001のQMS規格を理解し、規格の要求事項と照らし合わせて審査管理システムを運用していくためのトレーニングコースです。このコースの終わりには、知識と能力を得たことを証明するための試験があります。試験に合格した場合のみ、認証機関で審査を行うことが認められます。
ISO 9001内部監査員コース 上の主要審査員コースをもとに作られた、所要期間約2、3日のコースです。ただ、最後の試験が含まれていないので、これから企業内で内部監査をしようと考えている人向きです。
ISO 9001知識習得コース ISO 9001とその実施方法に関する知識を得るためのコースをいくつかご用意しています。コースの所要期間は1、2日で、オンラインでのeラーニングセッションでの学習も可能です。コースは、ISO 9001規格の全体像を知る必要がある人、あるいは企業内で規格の導入に関わる人向きです。主要審査員コースに比べて内容が厳選されており、お求めやすい価格になっています。
個人のISO 9001関連の資格取得に向けた公式トレーニング機関は、世界各地に数多くあります。
ISO 9001の導入について、詳しくはISO 9001無料ダウンロードのページをご覧ください。役立つ情報をご用意しています。